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  日本福祉大学が看護師資格で認定する10単位の取り扱いについて

現在発売されている、拙著『短大・専門学校卒ナースが簡単に看護大学卒になれる本』について、取材当時と現状で異なる事項が発覚しましたので、お知らせしておきます。
先日、私の運営する掲示板で、ご質問をいただきました。
学位授与機構・放送大学・社会人学生交流掲示板

この話題で問題になったのは、私の著書で紹介した、日本福祉大学の「看護師資格を有している者は、10単位が認定される」ことについての記述です。

日本福祉大学は、看護師が正科生として入学し、申請をすると、キャリア形成や医学などの単位として、いきなり10単位を認定し、申請した年の年度末に修得したことになります。
たとえば、専門学校修了の方が3年次編入したとすると、編入時に一括認定された62単位に加えて10単位が加算されるため、卒業までに修得しなければならない単位、62単位が52単位に減るということになります。

この10単位が、学位授与機構の積み上げ単位として活用できるとすれば、数万円の節約と、時間的なショートカットができることから、2009年6月26日、学位授与機構に電話取材したところ、「この10単位は、積み上げ単位として有効である」と正式に回答されました。(録音もあります)

しかし、2011年9月になって、掲示板で質問された方から「学位授与機構に問い合わせたところ、日本福祉大の看護師認定10単位は積み上げ単位としては使えないと言われた」という情報が寄せられたため、9月5日にその真偽について機構に質問し、9月8日に回答をいただきました。

私と機構とのやり取りの中で、結論として、看護師が日本福祉大学へ入学して得た資格認定10単位は、機構としては、「積み上げ単位としては認められない」ということでした。
理由は、短大や専門学校で修得した単位が看護師国家試験の受験資格となったのであり、その受験資格を前提として受験・合格した看護師資格は、その看護師資格をもって大学で10単位が認められたとしても、その10単位は短大や専門学校の教育を重複して認定したことになるからという説明です。

一見すると、正しいようにも見えます。

しかし、看護師資格は別に短大や専門学校でなくても、各種学校や厚労省認定しか受けていない看護師養成所でも取得できます。

もし、資格認定の10単位が常に認められないとすれば、各種学校卒の看護師が、日本福祉大学へ入学して、正味114単位を修得して卒業した場合も認められないことになるし、進学コース卒の看護師が日本福祉大学へ3年次編入して52単位修得して卒業した場合、学士(社会学:社会福祉学)を申請することもできません。

こうなると、学位授与機構は一般の大学では卒業要件とはみなさない単位(教職科目や司書科目放送大学の夏期集中の看護系科目等)も積み上げ単位として認めるのに、資格認定による単位は認めないという矛盾を持つことになります。

ところで、日本福祉大学は、認定心理士資格を持つ人についても資格による単位認定を行いますが、認定心理士というのはもともと大学の心理系の科目36単位について、日本心理学会が認める資格ですから、大学の単位を集めて取得した資格を評価した単位認定が重複するのだから積み上げ単位として認められないという理屈なら、私は納得できます。

しかし、学位授与機構の「日本福祉大の看護師資格で10単位認定は積み上げ単位としては認められない」という判断は、論理的に間違っていると思っています。

また、学位授与機構の学位審査課の判断と、同じ組織の学位授与機構の六車正章教授の記述と矛盾することになります。

大学における資格の単位認定の現状 ―全国大学調査の集計・分析から―(PDF)

その論文の28ページに以下の表記があります。

>つまり現行制度では, 学生が取得した大学外資格に
>ついて当該大学が認定した単位は, 機構の積上げ
>単位として認められるが, 機構が独自に資格取得に
>対して積上げ単位として認めることは想定されて
>いない。
>高等教育段階の様々な学習の成果を評価して学
>位の授与を行うことを目的に, 上述の文部省告示
>第68号の施行と併せて発足した機構として, 大学
>における資格の単位認定の普及に伴い, 一定の資
>格の取得に対しては, 機構が積上げ単位として直
>接認定できるようになる環境が醸成されてきてい
>るのではないかと考えられる。

また、機構の『新しい学士への途』に、「重複は認められない」とか、「資格認定による単位は積み上げ単位として使えない」という記述は見当たりません。禁止されていないものについて、申請者に不利益な判断をすることは許されるべきではないと思います。
このことから、学位授与機構が資格によると単位認定を認めないことについて、私は論理的に矛盾している判断だと思っています。
しかしながら、現段階として、学位授与機構は公式に「認められない」と述べている以上、この判断は当分の間、くつがえらないものと考えられます。

上記の理由から、『短大・専門学校卒ナースが簡単に看護大学卒になれる本』の著者として、以下のコメントを発しておきます。

(1)経緯や取材内容については適正だった確信しておりますが、結果的に誤った情報を書籍に掲載してしまったことについて、ご迷惑をおかけした皆さまには、心からお詫び申し上げます。

(2)もし資格認定による10単位を積み上げ単位として申請しようと思う方は、上記の通り、その10単位は認められない可能性があります。日本福祉大の卒業を早めることには使えても、積み上げ単位としては使えないものとして、余分に10単位を履修されることをお勧めします。

本件の機構の判断について、私は納得できておりませんので、今後も調べてまいります。
このような理由から、2009年9月発行の『短大・専門学校卒ナースが簡単に看護大学卒になれる本改訂新版』については、当該箇所を訂正した改訂新版を再び発行していただけるよう、出版社に交渉中であります。

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2011年9月11日 管理人 松本肇

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